構想だけ練った。「独裁者」という小説だ。
 死ぬのが絶対的に幸福であるという理論を僕は打ち出した。それを言うための小説だった。
 また、小説を書いて、出版し、世に出ようというのもあった。
 独裁者が全世界を支配して、核を一か所に集め、地球全土に核を落とし、人類を全滅させるといったもの。
 「彼はわからなくなった」と冒頭を考えた。
 当時私は何が正義かわからなくなっていた。
 主人公は三条だったと思う。
 東条英機から取ったのだ。

 三条がいかに世界を征服していくかを考えた。

 まず在日米軍をやっつけなきゃと思った。音声サブリミナルというのを考えた。
 サブリミナルというのがある。
 映像にフラッシュバックのように画像を入れるのだ。
 その画像は0コンマ何秒で入っているので、見ている人は認識できない。
 しかし、その0コンマ何秒で入った画像は脳に焼き付けられるらしい。
 そうして洗脳するらしいのだ。
 僕はそれを音にしてみた。
 つまり、音声で洗脳するのだ。
 それを作るため、三条が博士を雇うシーンを考えた。
 博士を雇い、音声サブリミナルを研究させるのだ。
 僕はそれで、在日米軍を洗脳することを考えた。
 在日米軍を洗脳しロシアを攻撃させることを考えた。
 
 レーダーに探知されない潜水艦というのを考えた。そこに戦車を入れる。
 そうして、アメリカ大陸に上陸して攻撃するというのを考えた。

 三条には付き人がいた。
 最後に三条が核ミサイルを地球全土に発射させるのだが、付き人と二人きりで話すシーンを考えた。
 そのとき、三条が死絶対幸福理論を言うのだ。それが僕がいいたかったことだった。

 僕は軍事小説を買った。

 やがて、最後の三条が核兵器を地球全土に発射させるときに、付き人と話し合うシーンだけでいいことに気付いた。結局、死絶対幸福理論を言いたいだけだったのだ。