イ・ミンジュンの両親の口癖は「いい大学に入って、いい就職先に入りなさい」だった。ミンジュンは幼い頃から、両親からその言葉しか聞いたことがない。

韓国は日本よりも学歴社会である。どんな大学に入学するかによって人生が決まり、職業差別も日本より多いため、社会に必要な工場勤務や清掃関係の仕事に就くと「人生負け組」と言われる。そのため、親は必死になって子どもを塾に通わせたり家庭教師を雇ったりするのだ。

ミンジュンも毎日のように塾に通い、家庭教師にも来てもらっていた。そのため、成績は上位の方にいた。両親も、ミンジュンも、いい大学に入っていい会社に入れると信じていた。あの日までは。

「……嘘、だろ……」

グシャリとミンジュンの手の中で受験票が潰れる。大学受験の合格発表の日、ミンジュンの番号はそこにはなかった。

両親には怒鳴られ、ミンジュンはそこそこ名前の知れた大学の工学部に通うことになったものの、通い始めてすぐに両親から言われた。