桜士が前を向くと、そこには桜の木がある。よく見ると、花が一輪咲き始めていた。白い蕾からあの美しい花が咲く様子を見ると、もう春なのだと実感する。

（もうそんな季節なんだな）

一花やeagleのみんなと出会ってもうそんなにも経っていたのかと驚いてしまう。だが、もう桜士は潜入捜査はしていない。もうeagleのメンバーと会う機会はグッと減るだろう。

「四月一日先生とも、もう会えなくなるのか」

胸にジワリと広がっていく感情に桜士は少し驚いてしまう。胸が空っぽになっていく「寂しい」という気持ちを自分が持てたことに、桜士はただ驚くしかできなかった。

（いや、この感情はきっと四月一日先生が思い出させてくれたんだろうな。四月一日先生と出会って、俺は良くも悪くも変わってしまったからな）

出会いは偶然だった。偶然桜士が潜入捜査をすることになった病院に一花がいた。普段ならば、事件が解決すればそれで終わる関係のはずだった。だが、それを桜士は望んでいない。