Cerberusのアジト潜入から一週間が過ぎようとしていた。幹部の多くはあの突入の際に逮捕され、公安や各国の捜査機関が残党を追っている。

桜士は本田凌の時には着ないスーツに身を包み、部下である灰原十(はいばらみつる)と共に警察病院へと向かっていた。

「本当に会わせるんですか?」

桜士の車の助手席にて、十がハンドルを握る桜士に訊ねる。その横顔は緊張に満ちていた。

「彼はあの人たちの仲間だったとは言え、奴らの組織に入ってテロに使用された爆弾や生物兵器を作っていたんですよ。しかも四月一日さんに至っては組織に誘拐・監禁されていたわけですし……。面会させるのは少し危険な気がします」

「……でも、完全に彼があちら側についていないことはもう証明済みだろ?それに、四月一日先生は彼に渡したいものがあるだろうからな。eagleの皆さんには会う権利があると俺は思う」

桜士は淡々と答える。この一週間、桜士の脳裏からは一花の涙と悲鳴が離れなかった。今も、ハンドルを握る手に力が嫌でも入ってしまう。