恋愛ゲームの悪役令嬢に転生しましたが、推しカプの仲人に忙しいので、そちらはどうぞ勝手にお幸せに


マリネはかつて、ポツリと口に出したことがあります。

“お嬢様……わたしの夢は……小さくても自分の家を持って…優しい旦那さんと子どもと暮らすことなんです…フフ、ほかの方から見たら…つまらないちっぽけな夢かもしれませんけれど、…家族がいないわたしには……とても、とても……大切な夢なんです”

寂しげな顔で…ひと粒だけ涙を流しながら……。

なんて、健気なのでしょうか。

その時に、わたくしは思ったのです。
マリネには、あたたかい家庭を持ってほしい……と。
彼女を大きな愛で包み込む優しい男性と。

生半可な男性ではだめです。

平民でもよろしいでしょうけれども、あいにくわたくしが知る範囲で心身とも強い方は限られていますし、大抵相手が決まっています。(わたくしの推しカプも多いのですわ…)

そこで、思いついたのが家族のいないアベルなのです。
複雑な生い立ちと孤独を抱えた2人……きっと理解しあえるはず。
わたくしがアク物をプレイしていた時には、悪役令嬢の侍女と彼女を嫌う王太子の侍従長という相容れない立場で、めったに関わりはなかったのですが…。

わたくしは、ずっと相性は悪くないと睨んでおりましたのよ。

案の定、仲人プレイ開始から3年経った今。2人は急接近しておりますの。

「あの……アベル様からお礼に…と今夜お食事に…誘われましたのですが……」
「あら、素敵。じゅる…(いけないヨダレが)いいじゃない。たまには羽を伸ばしてらっしゃい」

マリネははにかみながら頬を染めて「はい…」と返事しましたが…可愛らしいじゃないですか。ようやくこぎつけた推しカプの初デート。バッチリ対策はしましてよ!