アンナを見たガストンは眉を下げて困ったように笑う。

「まいったな。いつもきつく注意ばかりされるから……女官長からオレのどんな悪評を聞かされたのですか?」
「ち、違います!わ、わたくしはただ……いつもあなたが無頓着ですから……ついつい……」

ガストンの発言に、アンナが焦った声を出す。そりゃそうでしょう。好きな人には誤解されたくはありませんよね。

まだ治りきってない傷が痒いのか、ボリボリと鼻を掻いたガストンに、アンナは柳眉を上げる。

「ほら、また!爪で治りかけの傷を掻くのは不潔と言ってるでしょう。それだから治りが遅いんです。これをお使いなさい!」

アンナは腰に下げたカバンから清潔な布と瓶を取り出し、彼に差し出す。

だけど、ガストンがなにを思ったか、突然アンナの腕を掴んだ。

「なっ!?」
「悪い。オレ、不器用なんだ。できたらあんたにやってもらいたいんだけど?お手本見せてよ」

ガストンのなかなかの積極的な発言に、体を硬直させたアンナの顔がさっきよりも赤く染まる。

(おっとー!これは、絶対脈ありですわね!)

ガシッ!とカイン王太子の手を掴んだわたくしは、いい雰囲気の2人の邪魔をしないため、彼を引きずるように練兵場から遠ざけましたわ。

当然、カイン王太子から抗議の声が上がりましたわ。

「ちょ、いきなり何するんだよ!」
「しいー!2人きりにしましょう!今が大切なのですから!」
「2人きりに……」

なぜか、カイン王太子の顔まで赤くなりましたが…なにを想像したのやら。
遠ざかる2人をチラッと見ると、いい雰囲気でしたわ。やりましたわね、わたくし!

仲人プレイ成功に向けて前進ですわ!