「カイン殿下、今の発言はさすがに看過しうるものではありませんわね。我が国をたかが島の小国と馬鹿にされた……今、あなたは御自分の身分と血筋を盾に、我が国を蔑まれましたわね?」
「はぁ?」

意味がわからないのか、カイン王太子は目をパチクリさせてします。そりゃ、わたくしの言葉は子どもには難しいでしょう。
けれども、どうしても言わずにおれませんでしたの。

「あなたは、御自分で努力して今の地位にいるわけではありません」
「!?」
「わたくしもそうですわ。生まれながらのバーセンハイム公女……ですが、わたくしはそれに胡座をかき、慢心するつもりはございません。わたくしにはそれなりに夢がございます。そのために、厭わずに努力しようと思いますわ…やがて担う責務を全うするためにも」

わたくしがそう申し上げると、カイン王太子がムッとしたように問いかけてきましたわ。

「おまえの夢とは、なんだ!?」
「民をしあわせにすることですわ。皆(推しカプ)のしあわせがわたくしのしあわせなのですもの」

にっこり笑って迷いのない答えを返すと、なぜかカイン王子は押し黙ってしまわれました。


(なんなんでしょうか…まあいいわ…まずわたくしがすべきことは目の前のカップリングの成立。そのためならば、どんな努力も厭いませんわ!!)

ぐぐっと拳を握りしめたわたくしを一人だけ嫌疑の眼差しを向けていたことを、このときのわたくしは気づきませんでした。