「なにが公女だ……ぶすのくせに!」

まだ、ぶすを連呼するアホ王太子に、さすがに堪忍袋の緒が切れましたわ。

「カイン殿下、いい加減になさい!さすがにお父上であられる国王陛下にご報告いたしますからね!」

アベルがきつく叱責しても、ふん!とそっぽを向いた生意気なガキ王太子。わたくしはきっと額に青筋立っていたでしょう。

「いいえ、アベル様。ご報告なさらずとも結構ですわ……ですが、ひと言カイン殿下へ申し上げますわ」

わたくしは手にした扇をパチンと畳んで、しっかりと言い放ちました。


「わたくしは小国なれど、バーセンハイム公国の公女。
本来ならば、アクスフィアの王子とは君主の子ども同士として、対等な立場のはずですわよ?
わたくしを馬鹿にし軽んじるということは、我が国と民を軽んじるということです!その結果、わがバーセンハイムが敵対しうるご自覚はおありですの?」

まだ9歳だから無理かもしれないですけれど、御自分の言動がどれだけ他に影響を与えるかくらいは理解してほしくて申し上げました。


「なにがバーセンハイムだ!オレのアクスフィア王国とは比べ物にならないたかが島の小国のくせに」

(あ、だめだわこれ。完璧バカ王子だわ)

王妃様にはなかなか男の子が生まれなくて、結婚二十年近くでようやく授かった後継ぎ。
甘やかしたい気持ちもわかりますが……。

わたくしは、キッと目の前の王太子を睨みつけます。