「な,なんでっ……なま……ぅぅ」



いつ転ぶかも分からないような,よくつまずくどじな彼女のために,いつもぽっけには絆創膏がある。

それを渡しながら反応を待つと,ぽけ……とした彼女は,そうプログラムされた機械のように受け取ってくれた。

地面はアスファルト。

簡単に,彼女の膝に傷を作ってしまっている。



「……痛い?」



少しだけ,心が痛んだ。

傷自体にもそうだけど,きっかけは,俺だから。



「い,痛くありません!!!!!」



ぎゅっと目を閉じて,叫ぶように返された言葉。

意表を突かれて,俺は目を丸くした。



「そっか。じゃあほら,そろそろ立って」



彼女の手を取り,一緒に立ち上がる。

折角,ようやくこんなに近くで逢えたのに。

名残惜しいけど……



「またね」



俺が微笑むと,彼女の方は固まってしまった。

可愛いと思いながら,背を向ける。



「……ま,また……?」

「……ぇ,陽?! 大丈夫?! わっえ,どゆこと?!!?」



敢えて選んだ言葉に,戸惑う彼女と,嬉しそうにはしゃぐ彼女の友達。

陽……

あだ名なんだろうと思う。

陽深ちゃん。

もしまた呼べる時があるなら。

何故か,それはとても,心踊る想像だった。