何より嬉しい話だった。
でも伝わる感情は泣きそうで。
「本当に,ミーハーな気持ちで,誰もが憧れる王子様って印象で……それでも,好きになったまま終われなくて……」
恥じるような,悔いるような言葉に,胸が詰まる。
笑って,笑ってよ,陽深ちゃん。
そんな顔,する必要なんてない。
一目惚れなんて,顔で選んだも同然。
陽深ちゃんの中では,そうなのかもしれない。
「一目惚れ,いいじゃん。なら俺は,陽深ちゃんの好みの容姿で生まれてきて,すごく嬉しいと思う」
誰にとっても正解の顔なんてないんだから。
それでも,陽深ちゃんが好きだと思ってくれるなら,今初めて自分の顔が特だと思える。
「俺は,不細工だと思われた後で好きになって貰うより,最初からいい印象のまま好かれている方がずっと嬉しい」
他の誰でもない,陽深ちゃんの事だから。
「そういう,もの……なの? よく知りもせずって,思わない……?」
「うん」
それを言うなら,俺だって大した違いはないんだ。
お互いただ見ていただけだった。
それでも,分かることはある。
「私,わたし……」
目の前で鼻より下を抑え,泣き出してしまった陽深ちゃんに驚く。
声をかけようとしたとき,感情の漏れだした言葉が,耳に届いた。
「静流くんのことが……っ……すき」
はあっと続いて漏れた声。
嗚咽に,俺は陽深ちゃんに近づく。



