ストーカー気質な彼女は,甘い溺愛に囚われる。

すぐとなりの空き教室なんて,さっきの今じゃ人が来てしまいそうで。

わざわざ遠く離れたたまに使うだけの教室へ行く。

そして,俺はそこの机の1つに背を預けて,安心させるように目の前の陽深ちゃんを見る。

陽深ちゃんは,どうしたらいいか分からないように両手を組んで,俺の少し下に視線を落ち着けていた。



「……大丈夫?」

「あっはい……ほんとに……」

「敬語。それって,取れないかな」



聞いていてあげたかったけど,いい加減に気になってしまった敬語。

不思議に思いながら尋ねると,陽深ちゃんは少し迷うような動作を見せる。



「ほんとに……大丈夫,だよ? ……静流くん」



最後に小さく名前を呼ばれて,俺は唇を噛んだ。

天井を仰ぎ見て,片手を鼻の頭に乗せる。

可愛いって,伝えてもいいのかな。

それだけじゃ,なくて。



「好き……なんだ,陽深ちゃんのこと。俺だけの,女の子になってくれませんか?」



格好なんてつかない。

流し目で,陽深ちゃんの反応を見ると,嫌がってはいない。

いつもと同じように顔を赤くして,戸惑っていた。



「ぁ……ぅ,は……へぇ?!」



その戸惑いが,いつもと違って尋常ではないけれど。

それさえも,可愛い。

全身色づくような恥ずかしがりように,助けてあげたくなる。

でも,そうさせているのは俺だから。

その事実さえもくすぐったい。