ストーカー気質な彼女は,甘い溺愛に囚われる。

「友理ちゃん,ありがとう。でも静流くんは庇ってくれただけで,怒ってるわけじゃ,ない? よ? あ……静流くんも……わざわざ,ごめんね……?」



"友理ちゃん"にはありがとうで,"静流くん"にはごめんね。

そんな風に言われると,俺がただ口を挟んだだけみたいで,モヤモヤとした。

そう言えば



「友理さん,俺……怒ってた?」



ただ,止めたくて。

助けてあげたくて来ただけだった。

怒っていた自覚は,特にない。



「……何が?? 機嫌悪そうに見えたけど,違うの? 陽深の為に怒ってくれてるんだと思ったんだけど」

「そのとーりで~す」



俺じゃない。

両腕で窓のサンに凭れる真輝が,顔を上に傾けて返事をする。

俺が? 怒る?

怒ることってあんまり無いって,思ってたんだけど……。

陽深ちゃんが俺を見ていた。

慣れたように,考えるよりも前ににこりと笑う。

……。

はくり,と口を開けた。



「……俺,陽深ちゃんのこと大事にしてるから。余計な口出ししないでって,言っといて貰ってもいい?」



次に,静かに紡がれる言葉達。

自分で発しながらも,自分が聞いているような気持ちだった。



「も,もどろ……?」

「う……うん」



少しずつ,少しずつ。

山を上から削るように捌けていく人。

俺は,陽深ちゃんを見た。