ストーカー気質な彼女は,甘い溺愛に囚われる。

こんなただの悪意を向けられるのも,わざわざ取り合うのも。

いい気分なんて,しないはずなのに……

どう言えば,目の前の女子達や……陽深ちゃんに,伝わるんだろう。

どうしたら……



「ねえ陽深~! 聞いて……よ」



何があったのか,やれやれと教室に声を轟かす1人。

ほぼ全員が出入り口に目を向けると,陽深ちゃんの友達が



「あれ」



と言葉を止める。

やらかした顔をしたのもつかの間,面々の顔を見て,目元を鋭くさせた。



「陽深に,なにしたの?」



聞いてるんじゃない,問い詰めている。

そうハッキリ伝えるような,重たい声。



「何って……私達,別に」



めんどくさいことになったと,目配せをしあって,俺を見ては焦る数人。



「別になわけないでしょ? じゃあ何で陽深の前にあんたらが並んでて,静流くんは怒ってるわけ?」

「しっしらなっ……かんけい」

「あるっての! どうせ下んないことなんでしょ? 静流くんに構って貰えるのが羨ましいんでしょ。それこそ陽深とあんたらは関係ないんだから,さっさと帰れば? もう放課後なんだけど!」



口調に比べ,ぷりぷりと怒りを表情に乗せては,陽深ちゃんに寄って来た。



「陽深~。ごめんねぇ。失礼でめんどくさいのがいるって分かってたのに……トイレなんて後にすれば良かった~ぅぅ」



ぎゅぅっと抱き締められて,陽深ちゃんはのほほんと笑いながら返す。