ストーカー気質な彼女は,甘い溺愛に囚われる。

「俺の事は,"仲いい"陽深ちゃんが知ってるだけでいいんだよ」



俺が静かに教室へ足を踏み入れると,陽深ちゃんは驚いたように目を丸くして,教室はどよめいた。



「だから,陽深ちゃんいじめるのは,やめてくれる?」

「えっや……静流くん,私たち,西尾さんをいじめてたわけじゃ」

「でも,陽深ちゃんは困ってるよね? 怪我だってちょっと転んだだけで,わざとじゃな……」

「……あの,静流くん……誤解,です。ほんとにただ,聞かれてただけで……」



困ったように眉を下げて,俺を見上げる陽深ちゃん。

これでは,困らせているのは俺の方みたい。

そっと声をかけた陽深ちゃんのその様子を,庇われている立場で悔しそうに見ているのが気に入らない。

なのに,これ以上言うなと他でもない陽深ちゃんに止められてしまう。

別に,何かきついこと言ってるわけじゃ,ないのに。



「いつもの友達は?」

「いつ,もの? って? ……友理,ちゃん? は,今,お手洗いに」



気が強そうで,陽深ちゃんが大好きに見えるあの人が,この状況で陽深ちゃんを放置するとは思えなかった。

探すと,やっぱりいない。

肝心の陽深ちゃんも,何故俺がいつも一緒にいることを知っているのか,呑気に驚いている。