恋,愛?

目の前で落ちる,重たいため息。



「はあ?? 静流,じゃあ逆に何だと思ってたんだよ。それ以外なら逆にそれこそ異常だろ」



好き?

陽深ちゃんが,俺のこと?

ほんの少し前に問われたばかりの言葉が,突然に意味を書き換えられる。



「まあ,いいわ,それは一旦おいといてだわ」



軽く置いておいていい話じゃ,無い気がした。

あの子が俺をって,どういう,事なんだろう。



「気付いてて,嫌じゃないなら。普通声かけるだろ? 少なくとも俺はそう。なのに,静流はずっと知らないふりで,追いかけて貰えるのを楽しんでたわけだろ?」



概ね,そう。

としか言えない状況に,若干困る。

いいか,とでも言われているような気持ちになり,何か悪いことをしている様な気分だ。



「想像したことなんてねぇけど,静流……そんな重い感じだとは思ってなかったわ。あいつ,大変そうで同情する」



やれやれと,口調に手振りで表現された。

重い,の言葉の指すところを,俺は考える。



『ねぇ,友達が言ってたんだけど。静流くんと仲良さそうにしてたんだって? 廊下とか,自販機のとこ』

「ん? なんか騒がしくね?」

「そうだね」



穏やかを装った,感情を濁してくるような声。

自分の名前が出た様な気がして,真輝と同じく気が逸れた。