そうなると私は、この家を出ていく必要が出てきた。 姉の旦那さんと毎日顔を合わせることになるし、そうなるとやはり気まずくなるし。
 私の気持ちを姉はきっと知らないだろうから、今更そんなことで姉を困らせたくもない。
 姉が今一番幸せなのは間違いないし、その幸せを壊すようなことだけはしたくはない。

 なんなら、私がカオルと婚約したことで姉夫婦は喜んでくれている訳であって。
 私がカオルと結婚し幸せになることで、みんながより幸せになれると姉はきっと思っている。
 姉の旦那さんだって、私の好きな人ではあるけど、結局は姉の旦那様だ。私のこの想いが叶うことなんて一生ない。

 そもそも私は、カオルという婚約者がいる訳であって、姉の旦那様と結婚することは出来ない。
 それでもいいと、カオルは言ってくれたんだ。だから私は、カオルとの幸せを考えることにしたんだ。

「別に今から一緒に住んだって、後から住んだって変わらないなら、今からでもいいと私は思う」

「ミク……」

「それにね、姉夫婦が実家に住むんだって。妊娠中でこれからきっと大変になるから、実家に住むことにしたんだってさ。 お腹少しずつ大きくなってきてるし、その方が安心だよね」