ピアニストは御曹司の盲愛から逃れられない


 「栗原さんは元気か?」

 神楽は黎を見た。確か、メールアプリの交換もしたと聞いていたのに、連絡していないのかと驚いた。

 「ああ、元気だ。連絡していないのか?」

 黎はデザートを食べながら上目遣いに神楽を見た。

 「していない。俺も忙しかったからな。それに彼女のホームページを見ればコンサートがしばらく海外で続いているのはわかったから、日本へ帰ってきてからにしようと決めていた」

 「……そうか。友人にしてくれと言ったそうだな」

 「彼女に聞いたのか?」

 「ああ。悪いが、マネージャーはプライベートも最低限管理する必要があるんでね」