マンションへ入ると、花の香りにびっくりした。テーブルに彼の好きだという黄色と白色の花がたくさん、大きな花瓶に入っている。全て百合だ。その季節になったのだ。

 百合は香りが強いが、さすがに彼女の名前の花なので嫌いではない。母は百合が好きでこの名をつけたと聞いている。季節になると母のために仏壇の前にも今でも飾っている。嗅ぎ慣れた花の香りなのだ。

 百合は急いで靴を脱ぐと、部屋へ入った。彼が座って真剣にパソコンをみている。

 彼女は嬉しくて彼の首回りに抱きついた。黎はびっくりした。仕事に集中していて、彼女が入ってくることに気付かなかったのだ。

 「百合。どうした?」
 
 「黎さん、嬉しい。百合ありがとう」

 黎は彼女を隣に座らせて、久しぶりの彼女をじっと見る。