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 あの不倫騒動から三年の月日が流れていた。

 地方の子会社に飛ばされた美月はこの三年、毎日の様にパソコンのキーボードを叩きまくった。左遷されたすぐの頃は何も知らない社員達から軽蔑の眼差しや、噂のネタにされることもあったが、それも今では鳴りを潜めていた。美月はお洒落することを止め、眼鏡とマスクで顔を覆い、仕事に専念した。するとあんなに地味な女が本当に不倫をするのかと、疑問の声も上がった。

 これで良いんだ。

 全てを忘れるように、この三年間美月は仕事をしまくった。

 その結果、いつしか美月に付いたあだ名が『仕事サイボーグ』だった。黙々と人の倍以上の仕事をこなす美月を見た社員達の評価?なのだろう。

 今日も美月は机に向かいキーボード叩く。

「岡本さん昨日頼んだ書類……」

「こちらに」

「岡本さん今日の会議……」

「会議室の机の上に人数分の資料を並べ、パソコンのセッティング、メインの机にはレーダーポインターも置いておきました」

「岡本さんたのんだコピー……」

「全てコピーしてホチキスで留めておきました」

 全ての会話をパソコンから目を逸らすこと無く、キーボードを叩き続けながら答える美月。

「すっげー……」

「さすが仕事サイボーグ」