奈保ちゃんの催促する声を聞きながら。
旧校舎から、出て行った。
小学校を出て。
みんな、泣きじゃくりながら。
みんなで勇気くんを抱きしめた。
輪になって。
しばらく経つと。
雨が止んだ。
夜空に月が出ている。
月明かりを浴びて。
みんなで夜空を見上げていると。
「……助けてくれてありがとう」
と、声がした。
その声を、私は知らなかった。
みんなもそう思ったのか、全員でキョロキョロしてしまう。
小さな勇気くんが、いない。
代わりに。
背の高い男の子が立っていた。
着ている服がパツパツで。
窮屈そうにしている。
「勇気くん?」
尋ねると、頷いてくれた。
岡本くんが着ていた薄手のカーディガンを脱いで、勇気くんに渡す。
「会いたかった」
と、岡本くんが言うと、
「うん。ずっとこの日を信じてた」
と、勇気くんは泣いた。