知らない歌声を探した。
低い歌声は岡本くんか、仲谷くんだから。
低い歌声の近くからは、少し離れてみる。
間違えてはいけないのは、璃花子ちゃんだ。
女の子の歌声が、二つ。
どちらかが奈保ちゃんであるはずなんだから。
(璃花子ちゃん、私から離れてね)
心からそう願う。
高い歌声に誘われるように。
私は近づいていく。
暗闇の中。
キレイな高い歌声がそばにあった。
(璃花子ちゃん?奈保ちゃん?)
私の願いは届かず。
高い歌声は、二つ揃って聴こえる。
(璃花子ちゃんのそばに、奈保ちゃんもいるんだ)
どうしよう?
とにかく手を伸ばしてみる。
何かに触れた感触がある。
私は、その何かが女の子の腕だということに気づいた。
パシッと、つかんでみる。
(私が言う名前は、笠井 奈保ちゃん、ただ一つだけど……)
考えると恐ろしくなる。