もう唄わないで


だから。

早いうちに、勇気くんを返してもらわないといけないんだ。





もう、後悔しないように。







午後。

私は祖母に実家に帰ると言って、星無市にやって来た。




午後四時。

駅前のファストフード店で待ち合わせをしている。



店内に入ると、岡本くんがもう来ていた。



「ごめん、お待たせ」
と、岡本くんの座っている席の前まで行く。



「まだ約束の時間じゃないから、謝らなくていいんじゃん?」

「あ……、うん。そっか。そうだね」



岡本くんは先に頼んでおいたらしい、ポテトを私に差し出す。



「食べる?」



私は「ありがとう」と言って、一本つまんだ。



「……変な感じだよなぁ」
と、岡本くんは言う。



「何が?」

「ずっと一緒にいられると思ってた。みんなと。……でもさ、勇気くんも響ちゃんもいない」

「うん」

「オレさ、勇気くんのことも響ちゃんのことも好きだったから。……あ、友達の意味でだからな。仲良くしてもらえて、嬉しかったんだ」

「……」