もう唄わないで


「『21113』が笠井 奈保ちゃんの住所なら、決定的だよね」



ひとり、呟く。

インターネットに載っていた新聞の写真で、あの子が奈保ちゃんだとほとんどわかっているけれど。

絶対に間違えてはいけないから。

奈保ちゃん本人だという、ダメ押しとも言える確証が、もうひとつ欲しかった。






一番地を歩き回っていると、一軒家がずらっと並ぶ通りがあった。



表札を確認しつつ、私は足を進める。



あるお家の表札のところに、『一番地百十』と書いてあるのを発見した。



「百十……ってことは!」



私はその家から三軒向こうの家を思わず見る。



(奈保ちゃんの家かもしれない)



視界は暗いけれど。

タッタッタッ!

速足で近づく。






青い門扉が印象的な、一軒家。

表札を見てみる。



そこには、はっきりと書いてあった。



“笠井”の文字。




「奈保ちゃんだ」



奈保ちゃんは、ここに住んでいた。



あの子が呟いた『21113』は、奈保ちゃんの住所だ。

そのことは、あの子が奈保ちゃん本人だという確証をくれた。