もう唄わないで


「あ、そうそう」
と、璃花子ちゃんはわざとらしく咳払いする。



「【うるおい鬼】ってさ、都市伝説でもあるんだって。【うるおい鬼】を遊んではいけない条件で遊ぶとさ、本物の鬼を呼んじゃうんだって」



「え?」
と言ったのは、話を聞いていた全員だった。



「だからー、本物の鬼を目覚めさせちゃうんだって!」



璃花子ちゃんの声が少し焦り出す。



「……えー?なんか嘘くさい。だって今まで普通にオレ達【うるおい鬼】をして遊んでたけど、何にもなかったよ?」



岡本くんの眉根が寄る。

勇気くんも困ったように曖昧な笑顔になった。



仲谷くんだけは、
「遊んじゃいけない条件って何?」
と、興味のある声で聞いた。



仲谷くんは璃花子ちゃんのことが好きだから、こういう時には絶対に璃花子ちゃんの味方をする。



璃花子ちゃんは待っていました、と言わんばかりの満面の笑みを浮かべて、
「旧校舎ってあるじゃん?星無小学校にはさ!私達は新校舎に通ってるけど、敷地内にまだあるじゃん?旧校舎!そこから月が見えない時に遊んじゃいけないんだって」
と、慎重に答えた。