私は重なった手を引っ込めて立ち上がり、璃花子ちゃんのもとへかけ寄る。



璃花子ちゃんはニコニコと勇気くんのお母さんにお辞儀して、私を廊下に連れ出してくれた。



ひんやりした廊下。

いつだって廊下は冷たい空気に包まれている気がする。



「……響ちゃんだったか」
と、璃花子ちゃんが言った。



「何が?」

「『何が』って、ターゲットだよ」

「ターゲット?」



私には何のことだかわからない。

璃花子ちゃんは焦ったそうに、
「響ちゃん、勇気くんのお母さんのそばに行かないほうがいいよ」
と、言った。



「……勇気くんのお母さん、なんか怖かった」

「当たり前じゃん。何言ってんのよ、ひとり息子が行方不明なら誰だって必死になるよ」

「……」

「それくらい想像出来るじゃん。私だって、家族の誰かが失踪したら必死に探す。失踪する前の足取り辿って、一緒にいた子に問い詰める。何が何でも探し出す」

「うん、そっか。そうだよね」