「当てたっ、当てたんだっ!ご褒美!!」



【鬼の子】はそう叫んでいる。



「もう【鬼の子】じゃないっ、【逃げる子】に戻れるっ」



嬉しそうに笑いながら。



「響ちゃんが【鬼の子】だっ!響ちゃんと交代するんだっ」



【鬼の子】は目隠しを取ろうとする。

それを勇気くんが阻止している。



「さぁっ!!【差し出せ】っ!!!当てたご褒美を、【差し出せぇえぇぇ】っ!!!」



【鬼の子】が絶叫する。



怖くて。

私は動けなかった。

腰が抜けて。

その場にへたり込んでしまった。



「月が出る!!」
と叫んだのは、岡本くんだった。



教室から逃げていたと思ったけれど、岡本くんはほうきを手に戻って来ていた。

【鬼の子】をそれで追い払うために、ぶんぶん振り回している。






窓の外。

月を隠していた雲が、動き出した。






「【鬼の子】は、響ちゃんなのに」



【鬼の子】は悔しそうな声を出す。

そして、勇気くんをがっしりと抱きしめた。



「!?」