「相変わらず、壱先輩のこと、よく思ってないのね」


 亜子はそっと視線を落とす。


「でも最近は、女遊び? 落ち着いたらしいじゃん。たしか、幼なじみの三沢先輩と付き合ってるって」
「だとしても、過去は消えないのです」


 まるで恨みでもあるかのような物言いだが、深く聞いてしまえばややこしさが増すのみだろう。

 そう判断した綾芽は、簡単な相槌を打ち、流した。


 亜子としても、その話題を続けたくなく、話を変える。


「ところで、綾芽ちゃんの話はなんだったのです?」
「ああ、そうだった。今日から三日間、放課後この学校にSparkleが来るんだって」


 亜子はまた首を傾げた。


「まあ、そうなるよね」


 綾芽は亜子らしい反応に、苦笑する。


「スパークル……輝くとか、火花とかの意味がある単語です。それが来るとは、どういうことなのでしょう?」


 いくら亜子らしい反応と言えど、それは本気なのか?と思わずにはいられない。


「Sparkleはアイドルグループ。最近人気なんだよ」


 綾芽はスマホを見せる。


 容姿の整った男性が三人、煌びやかな衣装を身にまとい、並んでいる。


 しかし亜子の表情はより一層、戸惑いを見せる。


「私、アイドルさんはよくわからないです」
「でしょうね」


 亜子の一言が決め手となり、二人の間でその話題は終了した。