「由依に近寄らないでって言ったでしょ、このケダモノ」


 由依と昼を食べようと思って教室を覗けば、この罵倒。


 花村が由依の友達でいるのが、本当に不思議になるくらいだ。

 由依が花村の影響を受けなくて、本当によかった。


「由依が嫌って言ったのかよ」


 花村の背後に隠れる由依と目が合ったけど、すぐに逸らされてしまった。


「これが答えなんじゃない?」


 煽るような言葉すら、どうでもよかった。


 由依が迷惑だと感じている。

 その事実が、思っているよりショックだった。


 俺は大人しく、自分の教室に帰ることにした。


「壱、待って」


 すると、弁当を持った由依に呼び止められた。


「あの、さっきはごめん……その……どんな顔をすればいいのか、わからなくて……」


 必死に説明をしてくれる由依が、可愛かった。


 そして、嫌がられているわけではなかったと知り、自分でも驚くほどに、安心していた。


「えっと、お昼、一緒に食べるんだよね? どこで食べる?」


 周りの目なんか気にせず、堂々と由依と二人で食べたかったけど、今朝のやり取りを思い出した。


「第三教室は?」


 そこはあまり人が来ないところ。

 由依といるところを見られると、あの女子を刺激すると思っての提案だった。