学校に着いて教室に入ると、女子に道を塞がれた。


「これ、どういうこと?」


 昨日、由依に紹介したばかりの彼女が、スマホの画面を突きつけてくる。


『別れて』


 気持ちを自覚した以上、付き合い続ける理由なんてなくて、昨日送ったメールだ。


「そのまま意味だけど」


 そう言って横を通ろうとしたけど、彼女に肩を掴まれてしまった。


「納得できない」


 彼女の力は強くなる。


「俺、君の名前を覚えていないくらい、君に興味ない」


 すると、彼女は平手を振りかざして、勢いよく俺の左頬を叩いた。


 その痛みと彼女の睨みが、俺が最低だということを改めて教えてくれる。


「クズ」


 鋭い捨て台詞は、クラスにいる人全員が聞いていた。


 気まずい空気が流れるが、俺は気にせず自分の席に行く。


 丸い形で終わらせることはできなかったけど、縁を切ることはできた。


 これで正々堂々、由依にアプローチができる。

 由依が受け入れてくれるかわからないけど。


 でも、花村の言おうとしていたことが本当なら。

 俺の気持ちが本気だってわかってもらえたら、受け入れてくれるだろう。


 それから俺は由依にどんなふうに言うかを考えるので精一杯で、授業に集中なんてできなかった。