十年。


 これは私、三沢由依の片想い歴だ。


 相手は幼なじみの、片倉壱。


『俺、由依のために、全部一番になるよ』


 眩しい笑顔で言われたそれで、私は簡単に壱に落ちた。

 でも、小学生のころは付き合うなんて知らなくて、ただかっこいいな、好きだなと思っているだけだった。


 そこから壱はさらにかっこよくなって、高校生になった今ではとにかくモテている。


 最近では女の子に囲まれていない瞬間を、滅多に見ない。

 ついでに、彼女を切らしたこともない。


 そんな壱と私は不釣り合いなような気がして、私は、自分の想いを胸に秘めることにした。

 壱が女の子といるところを見て、心はもう、ボロボロだけど。


「今日も女の子に囲まれてるのね、奴は」


 化学室に移動していたら、隣を歩く深優が、目の前にいる壱を睨んでいた。


 その光景を見たくない私は、苦笑して流す。


「……いいの?」


 でも、深優は流してくれなかった。


 深優は小学生のころからの友達で、唯一私が壱に片想いしてることを知っている人。

 同じくらい、私が壱を見て苦しんでいることも知っているから、深優は壱に対してあまりいい印象を抱いていないらしい。