そして、朝になる。


身体の中心にある心臓がうるさい。
まるで耳の中に太鼓を叩いている人がいるみたい。
緊張だなんて、とても自分らしくない。


「うん。いいよ。採用」
「えっ?」
「なんでそんなに驚いてるの?」


目を丸くする私を目を細めてくすくすとおかしそうに笑う店長。
まばたきを繰り返して「ありがとうございます……」と頭を下げた。


こんなにあっけなく採用してもらえるとは思ってもみず、まばたきを繰り返した。


「いつから働ける?」
「あ……いつでも……」
「じゃあ明日からいい?制服なんだけど……」


あれよこれよと話が進んでいく。
混乱する脳内を必死に整理しながら、店長の話をインプットした。
すると、事務所の扉がゆっくり開く。


なんとなく目線を向けていると、入ってきた人物に目を見開いた。


「嘘……」


口をついて出た。

だって、そこにいるのは──御空奏。


よく教室で見る不機嫌な顔で「……うす」と、彼が肩で会釈。
空いた口が塞がらないとはこのことかもしれない。


彼は私の存在なんて気にもとめずに、同じ学校の制服を脱ぎ、制服に着替えていく。
ボタンをぽちぽち外し、ワイシャツを脱いで、肌色が露出した時、私ははじめて目線を外した。


仮にも女の子がいるのに……。

不覚にもドキドキしてしまっている自分に気づいて、顔を左右に振って、正気を取り戻す。


「あ、奏、紹介するよ。新しく入った大村晴香ちゃん」


店長が彼に私を紹介する。
ゆるりと彼の鋭い目が私を捉える。
目があって、目をそらす。


「あ、ども」


まるで"どうでもいい"と言わんばかりの適当な返答。

一応私、君のクラスメイトなんですけどね!
同じ学校の制服着てますけど、気づかないもん……?