そして、朝になる。



無口で、クール。誰ともつるまない。
一匹狼。彼を一言で表すと、これで間違いない。
誰にも興味がわかない私。
でも、彼の存在はどうしても気になってしまう。


目が勝手に追ってしまうのだ。


それにしても痛々しい傷跡。
どうしたらそんな殴り合いの喧嘩に毎日毎日発展するのだろう。


──キーンコーンカーンコーン。


チャイムが鳴る。自分の席に座った。
窓際からニ列目、後ろから三番目。
窓の外を見る。青い空。太陽が眩しい。
朝目覚めて時間は経っているのに、目にはまだ優しくない。


「…………」


担任の話は、耳をするりと抜けて、頭には留まらない。
空からゆるりと目線を右斜前に変える。


御空奏が、いる。


真っ黒髪は無造作にセットされていて、艶がある。
これは昨日気づいたのだけど、首筋にホクロがふたつ。


彼はいつも伏し目がち。
授業中も顔をあげていることのほうが少ない。
先生たちが何度注意しても、顔をあげることはない。手を焼いている。


基本彼は寝ていることが多いのだ。
スヤスヤと、寝息が聞こえてくることもある。


一度だけ寝顔を見たことがある。
昼休みに、人の多さと喧騒でひとりになりたいと屋上の階段を登っていたら、彼が屋上手前の階段で寝ていた。


彼の寝顔は普段の振る舞いからは考えられないほど、大人しく、あどけなさを感じた。


実際には、ほんの数秒の間だったと思う。
けれどその瞬間は、まるで時間が止まったかのように感じた。
はっと我に返り、踵を返して教室に戻った。


彼とはまともに会話をしたこともない。
彼に、名前や顔を覚えられている気がしない。
恐らくだが、街中で彼と遭遇しても、気づかれないと思う。