──朝は、嫌いだ。
起きるのが心底だるい。
居心地のいいベッドから離れられる気がしない。
柔らかい枕と身体を優しく包み込む毛布。
カーテンから差し込む太陽の光は、瞼の向こう側から眼球を刺激してくる。
今日はどうやら天気がいいらしい。
窓の外からは鳥の鳴き声が聞こえた。
「……はぁ、」
ため息を、吐く。
額に手の甲を当て、天井を意味もなく見つめて、ただただ時間が経過していく。
喜怒哀楽のどれもがめんどくさい。
感情を捨てたいと初めて願ったのは何歳の頃だっただろう。
もう、覚えていないや。
ふらっと身体に力をこめて、起き上がる。
畳に足をつけると、ミシッと軽く音を立てて軋んだ。
そして高校の制服に手を伸ばした。
紺色のブレザーとスカート、白いシャツ、緑のリボン。
巷では可愛いと有名な制服。
私も制服が可愛いから、なんて安易な理由で進学を決めた。
襖を開けて、部屋を出る。
オンボロのアパート。
2LDKだが、そのどれもが狭く、古い。
母は寝ている。父はいない。
私が生まれてすぐ死んだ。
朝ごはんは食べない。小学生の頃よく先生から「朝食は食べましょう」と言われていたけれど、母から朝食を出された記憶はない。
給食が楽しみだった。
その頃の私が平日に口にしていたのは、それだけだったから。