「きみこそ待てよ。まだ『イエス』と言わないつもりなのか? それに、どうしてシュレンドルフ伯爵家が関係あるんだ? バッハシュタイン公爵家と縁戚関係でもないだろう?」
「コルネイ、ここにきてまだとぼけるつもりなの? いい加減想い人にちゃんと言いなさいよ。こんなの、カサンドラの盗難でっちあげよりも茶番だわ。あなたが言わないのなら、アポロ、あなたから言いなさい」
「えっ、わたし? どうしてわたしが?」
「あなたまでとぼけるの? どっちもどっちよね」

 胸の痛みもあって、イライラが募るばかりである。

「アイ、もしかしてなにか誤解していないか?」
「誤解? そんなものしようもないわ」
「いいや。誤解している。もう一度言う。だから、全力で集中してきいてくれ。おれが愛しているのは、アイ、きみだ。きみを妻にしたい。きみが欲しい。きみこそがおれのすべてだ」
「キャー、素敵」

 アポロニアは、いまにも卒倒してしまうのではないかというほど大興奮している。

 その横で、わたしはますます冷静になっていく。

「フリッツ、いまのきいた? あなたも殿下みたいに熱く告白してくれたらよかったのに」

 そんな冷静なわたしの横で、アポロニアはえくぼの可愛い頬をふくらませた。

「悪かったよ。おれは、殿下みたいに飾るのが大嫌いだからな。『アポロ、おれの妻になれ』。これこそが『ザ・告白』だと本に書いてあった」

 わたしが見つめる中、フリードリヒがごつい肩をすくめた。

 ちょっと待って。

 どういうこと?