「なにをボーっとしているんだ? きみらしくない。殿下が不安になっている。はやく『イエス』と答えろよ」

 フリードリヒが急かしたけれど、アポロニアはまだ黙っている。

 どれだけためるの? どれだけ気を持たせるつもりなの?

 フリードリヒの言う通りよ。

「イエス」とたった一言言うだけよ。

「アポロニア、どうしたの? はやく言いなさいよ。あなたも待ち望んでいたんでしょう? 『イエス、イエス、イエス』そう全力で答えてあげなさい」

 イラっときて、つい口をはさんでしまった。

「なんですって? いくら天然のわたしでも、間違ってあなたの台詞を言ったりしないわよ」

 まだ抱きついたままのアポロニアを見ると、美しさと可愛さが混じり合った顔に驚きの表情が浮かんでいる。

「さあ、アイ。殿下に答えなきゃ。『イエス、イエス、イエス。全力で皇太子妃になります』と」

 そして、彼女はにっこり笑ってわたしを急かした。

 はい?

 やはり、意味がわからないわ。