「アイ、助けてくれてありがとう」

 アポロニアが抱きついてきた。

「わたしじゃないわ。お礼なら、コルネリウス、いえ、皇太子殿下に言うべきよ」
「殿下より、やはりあなたよ。あなたは、いつだって助けてくれる。それは、わたしだけじゃない。ここにいるみんなそうよ。ねえ、みんな?」

 アポロニアが周囲に問うと、みんな口々に「そうです」と答えた。

 意味がわからないわ。

 というのが率直な感想。

「それよりも、皇太子殿下。元凶がいなくなったところで、想い人に告白なさったらどうですか?」

「孤高の悪女」のわたしとしては、コルネリウスが嫌がることを無理矢理やらせたい。

「そうだな。そうしよう」

 が、意外にも彼は即座に応じた。

 そして、アポロニアと彼女に抱きつかれているわたしの前に立った。

「ずっと好きだ。ぜったいにしあわせにする。面白いこともたくさんある。だから、妻になって欲しい。いや、夫にしてください」

 それから、美貌を真っ赤に染めて告白した。

 ずいぶんとかわった告白だけど、素敵よね。

 またしても胸が痛い。

 痛みに耐えながら、アポロニアの返答を待った。

 現実にはそんなに経っていないでしょうけど、彼女は押し黙ったままである。

 この胸の痛みは、彼女が返答することでなくなるはず。なぜかそう直感した。

 だからこそ、はやく返答して欲しいのに。