「アイに助言されたのです。おれの妻のことなのだから、おれの好きな相手にすべきだ、と。たしかに、皇太子であるおれにそんな贅沢やわがままは許されません。重々承知しています。しかし、ありがたいことにいまは戦時ではなく、また政治的にも経済的にも荒れていたり争っているわけではありません。ということは、かならずしも政略結婚をしなければならないわけではない。愛するレディにあたって砕けてもいいのではないかと思うのです」
「バッハシュタイン公爵令嬢が? 殿下にそのようないらないことを……」

 シュナイト侯爵夫人は、怒りの形相でこちらをにらみつけてきた。

 ちょっ……。

 いまのコルネリウスの話、全部ききましたか?

 わたしの助言ってところは、ささやかなことよ。それよりも、コルネリウスはもっとすごい情報を与えてくれたわよね?

 たとえば、「愛するレディにあたって砕けてもいいのではないか」、というところ。

 そこ、すごく驚くべき情報よね?

 それなのに、わたしにこだわるなんてどうかしているわ。

 シュナイト侯爵夫人は、なにがなんでもわたしを血祭りにあげたいのね。