「お父様、お母様。ご心配とご迷惑をおかけして申し訳ありません。やはり、最後までいることにします」
「そうだな。わたしも公爵令嬢の言う通りだと思う」
「そうよ、エリーザ。お役目上、あなたの目的はかけがえのないもの。お父様の跡を継ぐ勉強にもなるわ。思う存分堪能していらっしゃい」

 突如、親子の熱いやり取りが始まった。

 皇宮の図書室や書庫には貴重な本や資料がたくさんある。シェーナー伯爵が管理をしているけれど、そういう貴重な本や資料は皇宮の外に持ち出し不可なのである。

 エリーザが皇太子妃候補に名を連ねているのは、本来の目的の為ではなくそれらの本や資料を読む為なのである。

 そう推測して言ってみたけれど、見事にあたっていた。

「荷物をまた運び込んでくれ」
「はやくはやく」

 わたしが見守っていると、シェーナー伯爵は自分のところの馭者に命じた。

 そして、慌ただしく馬車へ行ってしまった。

「さあ、アイ様。広間に案内いたします」

 エリーザがわたしの腕をむんずとつかみ、ぐいぐい引っ張って歩き始めた。

 な、なにか思っていたのと違う気がする。

 ひっぱられるままになるしかなかった。