客殿には客室がたくさんある。

 その中の一室は、わたし以外の人が使ったことがない。子どものころからわたしの部屋だった。

 そこは、いまでは暗黙の了解で開かずの間と化している。

 ひさしぶりにやって来たけれど、ちゃんと清掃が行われていてきれいなことに驚いた。

 すでに宮殿付きの侍女たちの勤務時間外。

 だから、フリッツにお願いしてトランクをクローゼットに放りこんでもらった。そして、そのフリードリヒを部屋から追いだし、夜着に着替えた。

 お腹がすきすぎている。

 見ると、テーブルの上に葡萄酒とサンドイッチが置いてある。しかも、わたしの大好きな西方地域の白葡萄酒とハムとチーズとタマゴのサンドイッチである。

 顔見知りの侍女と料理長が準備してくれたに違いない。

 ありがたくいただいた。

 完食後、寝台を見るとシーツはきれいで上掛けや枕はふっかふかの状態である。

 まるで、今夜わたしがやって来ることがわかっていたみたい。

 おもいっきり寝台にダイブした。って、ダイブした瞬間には眠りに落ちていた。