「皇太子妃候補の権利を放棄してはおりませんわ」

 さわやかな笑みを浮かべているつもりだけど、きっと嫌味ったらしい笑みになっているわよね。

「くだらない修行? 拷問の時間? いびり方教室? とにかく、くだらない時間をすごしたくなかっただけです。だけど、皇太子殿下より参加するよう直接命じられました。だから、仕方なくやって来ただけです。なんなら、殿下に問い合わせていただいて結構ですが?」

  勝ち誇ったように告げた。

  問い合わせたところで、コルネリウスは「ああ、そうだよ」としか答えない。

 コルネリウスは、彼女とわたしの衝突を見たいに違いない。それに、彼も彼女には子どもの頃からマナーのことで手ひどくやられている。

  もしもシュナイト侯爵夫人がいまの話を照会したとしても、よろこび勇んで肯定する。


 シュナイト侯爵夫人は、わたしの反撃に言葉を詰まらせた。その横をすり抜けながら、「じゃっ、通りますね。これからよろしく」と丁寧に告げた。

 そして、意気揚々と第三の門をくぐった。