「わぁ、すごいおいしそう!みさママの唐揚げ好きだから嬉しい!」

「そんな風に言ってくれるの、あさひちゃんだけよ。たくさん食べて行ってね!」

「俺も言ってるだろー」

「拓海は言っとけばいいって思ってるでしょ。女はね、そうゆうのちゃんとわかってるからね!」

「拓海くん言われてるー!」


いつになく賑やかな我が家の食卓、あさひがいるからだ。明日帰る兄貴のためにと、あさひを呼んで夕ご飯だ。


「………。」


相変わらず唐揚げをもぐもぐ…口いっぱいに入れてもぐもぐ。

…あさひも楽しそうなんだよな。

仕事忙しくて疲れてるって言うわりに、兄貴と喋ってるあさひの声はいつもより声張ってる気がするし、オレと話してる時とは違うって言うか…


「あさひ、箸の持ち方キレイだな」

「え…、何急に?」

「ううん、昔もっとおかしな持ち方してなかった?」

「そんなこと覚えてるの!?な、直したんだよ!恥ずかしいから!」

「へぇ、がんばったんだな」


やっぱり唐揚げを頬張るしかできないんだ。

なんかすげぇ、苦しい。
 
唐揚げ食いすぎたかな。

鉛が溜まっていくように重い。


「…ごちそうさま」


口の中のから揚げを無理に飲み込んで箸を置いた。


「碧斗、もういいの?」

「もういい」

「ご飯残してるじゃない」


母さんの言葉を無視して、立ち上がった。


「碧斗!」


むしゃくしゃしてしょうがなかった。


「いらねぇっつってんだろ!」

「碧斗、母さんにそんな言い方するな」


つい声が大きくなったオレに兄貴がキッと瞳に力を入れた。それに無性に腹が立った。


「なんだよっ、久しぶりに帰ってきた奴に説教なんかされたくねぇよ!」