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遠いところでアラームが鳴っているのに気づき、重たい瞼を上げた。
枕元に置いていたスマホを探し出し、早朝の六時を確認した後に思い切ってベッドから出る。
そろそろつむぎは起きているだろうか。
今日から彼女はバイトを始めるのだ。
昨晩詳しい時間を聞かないまま別れてしまったのだが、寝る前にふと彼女を羽田まで送り届けようと思いついたのだった。
メッセージを送ったときに気付けたらよかったのだが。
寝室から出てすぐに、卵焼きを焼いたような香りが鼻をかする。彼女はやっぱりもう起きてるようだ。
「つむぎ、おはよう」
「あれ、久斗さん? おはようございます……!」
リビングの扉を開けると、すぐにダイニングテーブルの前に立っていたつむぎが俺の存在に気付いた。
テーブルの上に置いてある和食の朝ご飯にサランラップをかけている最中だった。
あれ、これは?
朝食と一緒に並んでいる箸が自分のものだ。
するとつむぎは、笑顔で俺の前にやってくる。
「今日はもっと遅い時間に起きてくるのかと思っていました。何かご予定でもあるんですか?」
「いや、特にはない。つむぎを羽田まで送って行こうかと思って起きたんだ。もうそろそろ出て行くだろ?」
「えっ……!」
つむぎは初めこそ俺に悪いと遠慮していたが、「じゃあ少しだけドライブに付き合って」と違うアプローチをしてみたら、照れくさそうな顔で了承してくれた。
彼女に出勤時間を聞いたら七時らしいので、もうそろそろ家を出ないとまずいだろう。
「じゃあ、急ごうか」
玄関に向かって体を反転したそのとき、つむぎはダイニングテーブルに視線を向けた。
「これ……久斗さんの朝ご飯なので、よかったらお家に帰ってきてからでも食べてください。もしいらなければ冷蔵庫に入れておいて頂ければ後で私が食べるので」



