エリートパイロットは没落令嬢を惜しみない愛で包む

久斗さんと楽しい時間が過ごせて名残惜しいけれど、致し方ない。
おやすみなさい、と言いかけたそのとき――。

ソファに座っていた久斗さんが、急に私の腕をパシッと掴んだ。
一瞬シンと部屋が静まり返る。

その力強さに驚いていると、久斗さんは目をわずかに見開き、すぐに私の腕から手を離した。

「おやすみつむぎ、ゆっくり休んで」
「は、はい……。ありがとうございます、久斗さん」

久斗さんの遠慮がちな笑みを見て、私はすぐに洗面所へと歩き出した。

い、今のは何だったのかしら……?

遅れて顔に熱が集中してくるし、心臓も早鐘を打っているしでてんやわんやだ。

いきなり手を掴まれるなんてことは今までなかった。
もし触れられることがあったとしても、私をからかうときばかりなのに。

久斗さんが何を考えているのかはまったく分からないけれど、いつもと様子が違うことだけはたしかだった。
いつも優しい彼の手が、あんなに力強いなんて……。