エリートパイロットは没落令嬢を惜しみない愛で包む


秋元さんに勧められた簡易椅子に座った直後に尋ねられる。
テーブルを隔てた向こうにいる彼女は、私を物珍しそうな顔でさらに緊張で体に力が入る。

「い、いえ! 主人は年上の大人の男性です」
「えーっ、そうなの? なんの仕事をしてる人?」

秋元さんの質問に思わず口をつぐむ。
久斗さんの職業はふたつあり、どちらを言うのが正しいのだろう。
社長と伝えればさらに突っ込まれて、詳しく話してしまいそうだし……。
JARの社長といったら大騒ぎになってしまうかもしれない。

「パ、パイロットなんです」

「うっわ、こんな可愛い顔してちゃっかりハイスぺ男捕まえてんじゃないのぉ」

秋元さんはわざとらしく大きなため息をついて、「私もパイロットと結婚したーい」と愚痴っている。
久斗さんが所属しているのは国内の会社とだけ伝えると、彼女はそれ以上聞いてくることはなかった。

ほっとしている暇もなく、秋元さんにあれこれ質問される。
私が入れるシフトの状況、実家のホテルでどんな仕事をしていたか、外国語の勉強年数はどれくらいなのかなど……。

「あとお菓子作りや料理をすることがほんとに好きでっ……!」
「分かる分かる。見るからにそんな感じ、するもん」

秋元さんは私の最後の自己アピールをさらりと受け流し、にこりと笑った。

「よし、採用です! 黒瀬さん、ホールでぜひうちで働いてください!」