エリートパイロットは没落令嬢を惜しみない愛で包む

「ええ、そちらにします。私大好きなんです。メロン」
「それはよかった」

私は彼に手を引かれ、ホテルの一階にあるティーラウンジにやってきた。
広々とした店内には豪奢なシャンデリアが飾られ、磨かれた大理石の床に反射して店内はキラキラと輝いている。
ここは全面ガラス張りの窓があり、先ほど歩いていた日本庭園と面していて洋と和のコントラストが絶妙だ。

向かい側に座る黒瀬さんがふたつ折のメニュー表を手に店員さんに注文してくれている。
彼の上品な所作が、とても大人に見えた。
着ているスーツもシャツから覗く腕時計も、磨かれた革靴も超一流なのだろう。
子供の私とはずいぶん離れた世界で活躍している人。
結婚することしか、父親を助けられない私とは全然違うんだ。

「……つむぎさんは、本当は八神さんと結婚したくないんじゃないか?」
「えっ?」

確信を突く言葉に、口をつぐんでしまう。
すると彼は私の表情を見つめながら、口角を上げた。

「さっき言っただろう、可愛らしい顔が辛そうだと。僕としゃべっているときと全然違うよ」
「っ」
「なんてね」

黙り込む私に、黒瀬さんはくくっと喉奥で笑ってくる。

全然冗談に聞こえない……。

顔が熱い。きっと真っ赤になっているだろう。
渉さんとの会話は一方的に彼が話して聞いているだけだったし、自分が男性を前にするとこんなに会話ができないなんて知らなかった。

「無理はするな。結婚生活は長いんだ」