エリートパイロットは没落令嬢を惜しみない愛で包む

「えっ……と」

なんて答えようか考えている私に、小春さんは不思議そうな顔で首を傾げる。
今から契約結婚についての取り決めと、マンションの見学を行う予定だ。
しかし久斗さんは私の気持ちを配慮して、空港近くのホテルをとっていてくれる。
実質、今日は彼のマンションに泊まることはないのだ。

「なんでそんなことをお前に言わなくちゃならない。夫婦になるんだから当たり前だろう」

隣にいた久斗さんは飽きられたように小春さんに言い放ち、しっしと追い払うしぐさをする。
小春さんは久斗さんの反応が気に食わない様子で、むくれ顔で哲也さんとエレベーターに乗り込んでいった。
お店の前でふたりきりなった私たちは、自然と顔を合わせる。

「気を悪くしたらすまない。小春は少しブラコン気味で俺の一挙手一動を知りたい所があって」
「そんなっ……全然気にならないです。兄妹が仲がいいのはとてもいいことですし」

それに、久斗さんが謝るのもなんだか違うのかなと思ってしまう自分がいる。
私たちは夫婦になるのだ。
小春さんが何気なく質問しただけであり、婚約者なら久斗さんの住むマンションに泊まるのが普通なのだろう。

「じゃあ、今から俺の家で書類にいくつかサインをしてもらいたい。早めに済ませたいと思うが、体がしんどかったらまた後日札幌のご自宅に郵送するが」
「い、いえ、平気です。それにマンションの雰囲気も見てみたいし」
「そうか」