エリートパイロットは没落令嬢を惜しみない愛で包む


銀座の一等地に構える料亭の個室に、私は久斗さんと並んで座っている。
今日は彼のご家族との顔合わせで上京してきた。ここに来る前に、久斗さんと半日デートをして緊張が和らいだとタカをくくっていたけれど、やはり張本人を前にすると、緊張で頭が真っ白になってしまう。

「――初めまして。久斗さんとお付き合いをさせて頂いております。朝宮つむぎと申します」

ぎこちない笑顔でテーブルを隔てた向こうにいる、久斗さんのお父様と妹さんに会釈する。
すると、ハハッと野太い笑い声が上がった。

「緊張しなくていいんだよ。久斗からは色々と話を聞いているし、つむぎさんに会えることを本当に楽しみにしてました。JAR航空の現会長の哲也です」

よろしく、と付け足して哲也さんは気さくに話しかけてくれる。

「今まで何度も縁談の話があったんだが、久斗はまったく乗り気じゃなくて……もう一生結婚しないんじゃないかと心配していたんだ。だからつむぎさんと結婚したいと言ってきたときは、夢か何かと思いました。本当にありがとう」

「そんな……私こそ歓迎して頂き嬉しいです」

哲也さんが心底嬉しそうに伝えてくれるので、少しだけ驚く。
久斗さんほどの人だったら、相応しい相手の基準も高そうだし、田舎のホテルの令嬢をここまで歓迎してくれるとは思っていなかった。むしろよく思われていないという取り越し苦労をしてしまったほどだ。

ちらりと視線を横に流すと、久斗さんは苦笑している。
今までの縁談の話は、あまり触れられたくない話題だったのかもしれない。

「つむぎさん、可愛いらしい名前ですね。私は妹の小春です、よろしくお願いします」