洋食屋を出て店を回る。
女性は買い物デートが喜ぶとばかり思っていたが、つむぎは物欲のかけらもなく困惑していた。
無理に勧めるのはよくないと、回っている間に欲しそうな顔をしていたら買ってあげようと心に決めた。
「久斗さんお似合いです。こっちのストライプタイプもいいと思います」
逆に俺が行きつけのスーツ店に入り試着すると、彼女は熱心に似合うスーツを選んでくれた。
さらにはスーツに合うネクタイや靴下まで。店員と同様なほどに彼女は一生懸命だった。
「やけに男物のスーツに詳しいのはなぜだ?」
「お父様がファッションセンスが皆無で私がいつも選んであげてたんです。だからかな?」
「なるほど」
彼女は若くして母を亡くしているからか、随分と父親を助けてきたようだ。まさか着ているものまで。
年を召した父親は買い物に行くたびに娘に感謝していただろう。
俺は彼女の家族思いで優しいところが、とてもいいと思っている。
「久斗さんは背が高くてスーツ姿もかっこいいですね。私、ちんちくりんだから羨ましいです」



