「いえ、その……。私は朝宮と申します」
渉さんとは婚約者と堂々と言えるほど関係性が深くないので、なんと答えてよいのか分からない。
彼に見つめられている恥ずかしさと、腕を組んでこちらを見る渉さんが不機嫌なように思えて……自然と顔が下がった。
差し出された手を弱々しく握ると、逆にしっかりと強く握り返された。
その力強さに、どきりと心臓が跳ねた。
「下のお名前は?」
「つむぎ、です」
「つむぎさん。奥ゆかしくて素敵な名前ですね」
彼に名前を呼ばれて、何故か顔が火照ってきた。
鼓膜から脳を溶かすような、艶のある声。
「じゃ、JAR航空って……あの、国内最大手のですか?」
「ええ、そうですよ」
彼は遠慮がちに目配せした後、私から手を離す。
するとすぐ隣にいた渉さんは、私と黒瀬さんの間に割って入ってきた。
「黒瀬さんはどうして今日、こちらに?」
「執行役員の会食があったんです。今から帰るところで、偶然八神さんを見かけたものですから」
「偶然。へぇ……」
渉さんはそう言って、警戒するように目を細める。
一方黒瀬さんは動じた様子はなく、ずっと微笑んだままだ。
ふたりとも、あまり仲が良くないのかな。
居心地の悪さを感じているとピリついた空気を切るように、渉さんの着信が鳴り響いた。
「――そんなの、連休明けでいいのでは?」
渉さんとは婚約者と堂々と言えるほど関係性が深くないので、なんと答えてよいのか分からない。
彼に見つめられている恥ずかしさと、腕を組んでこちらを見る渉さんが不機嫌なように思えて……自然と顔が下がった。
差し出された手を弱々しく握ると、逆にしっかりと強く握り返された。
その力強さに、どきりと心臓が跳ねた。
「下のお名前は?」
「つむぎ、です」
「つむぎさん。奥ゆかしくて素敵な名前ですね」
彼に名前を呼ばれて、何故か顔が火照ってきた。
鼓膜から脳を溶かすような、艶のある声。
「じゃ、JAR航空って……あの、国内最大手のですか?」
「ええ、そうですよ」
彼は遠慮がちに目配せした後、私から手を離す。
するとすぐ隣にいた渉さんは、私と黒瀬さんの間に割って入ってきた。
「黒瀬さんはどうして今日、こちらに?」
「執行役員の会食があったんです。今から帰るところで、偶然八神さんを見かけたものですから」
「偶然。へぇ……」
渉さんはそう言って、警戒するように目を細める。
一方黒瀬さんは動じた様子はなく、ずっと微笑んだままだ。
ふたりとも、あまり仲が良くないのかな。
居心地の悪さを感じているとピリついた空気を切るように、渉さんの着信が鳴り響いた。
「――そんなの、連休明けでいいのでは?」



