勢いをつけて言ってみると久斗さんは笑みをこぼして歩き出す。
以前庭園で感じた紳士的な印象とは違い、彼の男気のようなものを感じた。
私と久斗さんは病室に戻ってきてすぐに、待ってくれていた父に結婚する旨を伝えた。
もちろん一年更新の契約夫婦なんて非現実的な内容は、口が裂けても言えない。
しかしそれ以外の内容は、私はほぼ嘘い偽りなく話せたように思う。
庭園で偶然彼と出会い、一緒に過ごした時間に癒されて惹かれたこと。
そして渉さんと私との関係性と将来への身体的な不安。
そして久斗さんはというと……。
「日は浅いですが、僕は彼女のことを愛しています。結婚を許して下されば朝宮ホテルの経営も全面的にサポートする所存です。不安なことが山ほどあるかと思いますが、お嬢さんの面倒は責任をもって僕が見ますので安心してください」
彼の『愛している』という言葉に、どきっと心臓が跳ねた。
でも少しだけ胸が痛いのはなぜなんだろう……?
すると私たちの話を一通り聞き終えた父は黙り込み、ふいに真剣な面持ちで顔を上げた。
「……私の幸せはつむぎの幸せです。分かっていたのに会社のために無理をさせてしまって、娘の優しさに甘えていました。どうぞ幸せにしてやってください」
「お父さん……」
「本当は心のどこかで気づいていた。つむぎが渉さんとの将来を悲観しているということは。つむぎがしたいようにすればいい」
父の言葉に、安堵と喜びで熱いものが込み上げる。
横を見ると久斗さんもほっとしたように微笑んだ。
――私、本当に久斗さんと結婚できるんだ。



